二本松市の民俗芸能
(福島県二本松市)
二本松市は、福島県福島市と郡山市のほぼ中間に位置する人口約6万人の市です。現在、国指定2件、県指定4件、市指定25件の合計31件の無形民俗文化財が継承されています。
神楽や獅子舞・予祝神事などの民俗芸能が残されていますが、今回はそのうち2件の民俗芸能を紹介します。
『石井の七福神と田植踊』は、平成7年12月26日に国指定重要無形民俗文化財に指定されている予祝芸能です。これは、初春に家々を訪れ、その年の稲作や養蚕が豊穣であることを祈り、主に踊りの形で田植など稲作の耕作過程を模擬的に演じてみせて祝うという、東北地方特有の田植踊の一つです。もとは旧暦の小正月に集落の各家々を巡って行われていたものが、正月の年重ねの祝いの席に依頼されて踊られるようになりました。
旧石井村の鈴石東町・錦町・北トロミ地区に伝承され、現在「石井芸能保存会」として継承しています。この芸能は当地方田植踊の特徴である七福神が登場した後、田植踊の一行が舞い込む形で行われています。七福神は、初めに先導役の稲荷が登場し、続いて毘沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人、恵比寿、大黒天の七福神が次々と舞い込んで、祝福の寿ぎをします。道化役(ヒョットコ面)2人が、おどけたしぐさで注連縄と蚕のまぶしを編み、稲作、養蚕が順調に進行することと豊饒を祈願します。その後七福神が退場し、引き続いて田植踊の一行が登場します。早乙女(手甲、たすきがけで、花笠をかぶり、扇子を持つ)4人、奴(手甲、たすきがけ、はちまき姿に軍配を持つ)5人、先導役の山大人(久六とも)(竹杖2本持つ)1人、その他の役の者が登場し、久六の指図にしたがって「かながせ」「ごようまつ」「祝の田植」の正月の祝い踊りが踊られ、その後、田うないから米搗きまでの稲作の各過程の模擬的所作を伴った各踊りがあり、秋の取り入れ祝いの「鶴どの亀どの」などを踊って終わります。
『二本松の提灯祭り』は、平成23年6月10日に祭り全体が県の指定を受けました。二本松市本町の二本松神社の秋祭りで、氏子の若宮、松岡、本町、亀谷、竹田、根崎、郭内の7町内からそれぞれ太鼓台が繰り出し、祭り囃子を奏でます。現在、「二本松神社例大祭提灯祭保存会」が組織され、祭りを継承しています。祭日は、毎年10月4日から6日までで、太鼓台はこの間町内を練り歩きます。
伝来の歴史については充分明らかではありませんが、二本松藩地誌『相生集』に「寛文四辰年(1664)六月廿四日竹田町根崎町相はかりて愛宕の祭礼を営み初て神輿を渡し神楽太鼓を打て町々を押わたし(以下略)」とあり、初期の祭り囃子の様子がうかがわれ、また、寛政3年(1791)8月の「御祭礼行列書上帳」本町の項に、「囃子方、笛三管六人、鼓六調六人、太鼓三柄八人」とあり、以下、亀谷、竹田、松岡、根崎、若宮の各町内についても同様に記されており、当時すでにこの祭り囃子が盛んに行われていたことを知ることができます。
太鼓台は町内によって多少の相違はありますが、おおよそ間口1.7m、奥行2.3m、高さ3.5mで4つ車がつき、棟と欄間には彫刻をほどこし、金箔仕上げをしてあります。また、夜間は庇から上に枠を組んで、300個前後の提灯を取りつけ、さらに屋根の上にはスギナリという7m前後の竹を立て、その先端を割って8個の提灯を下げます。これらの提灯を灯して町内を引き回すことがこの祭りの特色であり、祇園祭りの神迎えの宵宮の型をよく移しています。
この2団体は、現在18団体が加盟する、二本松市無形民俗文化財保存団体連絡協議会に所属し、協議会が主催する「にほんまつ伝統芸能祭」(毎年2月開催)に毎年出演し、保存継承に努めています。
現在二本松市でも、山間部の少子高齢化や過疎化が進んでいるため、地区内における後継者の確保及び育成が大きな課題となっております。市としても、各保存会と連携をとりながら保存に努めてまいります。
石井の七福神と田植踊 二本松の提灯祭り