江戸祭礼囃子の普及・啓発を目指して
(東京都世田谷区)


 世田谷区は、東京都特別区の南西に位置し、古くは江戸の食を支える田園地帯として栄えていた地域です。農耕と密接に関わってきた地域であることから、区内には多くの鎮守の森があり、春や秋の祭礼では神輿が繰り出され大いに賑わっていたようです。
 この世田谷では、江戸時代の文化年間(1804〜17)に囃子名人、大場増五郎が出て、世田谷村を中心として江戸囃子を広めました。中でも船橋村の内海軍次郎は、大場直伝の囃子をさらに改良して船橋流を興した人物として知られています。また、多摩川流域では、大井囃子が等々力村や瀬田村に伝わり、現在では地元大井にも残っていない大井囃子の奥伝が伝え守られています。その他にも、大場直伝の経堂流を興し、安宅崩し(あたかくずし)という秘曲を今に伝える安宅囃子や区の無形文化財にも指定されている喜多見氷川神社の神前神楽を伝承する喜多見楽友会など、特色のある囃子が多く現存しています。
 このような優れた郷土芸能が残る世田谷区ですが、近代化の波の中で江戸囃子の継続は様々な苦境に立たされていました。区の教育委員会は、その伝統芸能の灯を絶やさぬため、昭和47年に世田谷区郷土芸能保存会を立ち上げ、その保存・伝承に力を注いできました。
 平成18年度は会創立から40周年にあたり、17年度当初に保存会顧問から何か記念の事業を実施できないかと要請を受けたことから、記念誌としての映像資料作製を決めました。
 制作にあたり、区の公聴広報課の協力を得て、毎年8月に実施される「せたがや区民まつり」から収録を開始、18年3月までの8ヶ月にわたる取材を敢行し、保存会傘下の18団体(お囃子17団体、餅搗き保存会1団体)と毎年保存会と教育委員会の主催で開催される「世田谷区郷土芸能大会」に友情出演いただいている群馬県川場村の萩室獅子舞保存会の映像、さらに区の指定無形民俗文化財第1号に輝いた等々力囃子保存会の高橋福蔵翁(故人)の貴重な映像を収録したDVDを18年8月に刊行しました。
 これは、40周年の記念であると共に郷土に伝わる貴重な無形文化財の映像による保存、また伝統文化の普及啓発を同時に実現させたものであり、解説書には江戸祭礼囃子の概説、各保存会の由来・歴史、保存会歳時記など多彩な情報を載せて観光資源としてのお囃子情報を発信しています。
 作製したDVDは、その一部を保存会の会員に配布しましたが、大半は普及啓発のために有償で配布することとしており、ご希望の方には入手方法をお知らせしております。詳しくは下記までお問合せください。

  世田谷区教育委員会事務局 生涯学習・スポーツ課 団体支援担当
  (世田谷区郷土芸能保存会事務局)
  電話03−5432−1111(代表)

(平成18年11月現在) 


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