高原町の民俗芸能
(宮崎県高原町)


 高原町(たかはるちょう)は、宮崎県西部に位置する人口約1万人の町です。宮崎・鹿児島県境にある霧島山系東端に位置する「高千穂峰」の東麓にあります。高千穂峰(標高1574m)は、南九州を中心に、遠くは肥後・豊後国まで広く崇拝された霊峰で、この高千穂峰を取り囲むように配置された6社(霧島神宮・霧島東神社・狭野神社・東(つま)霧島神社・霧島岑神社・夷守神社)を特に「霧島六社権現」と称し、現在でも厚く崇拝されています。
 高原町には、神楽や棒踊り・予祝神事などの民俗芸能が残されていますが、特に著名なのが、学術的に「高原の神舞(霧島神舞)」と呼ばれている2地区の神楽(祓川(はらいがわ)・狭野(さの))です。ちなみに、南九州では「神楽」の事を「神舞(カンメ)」「神事(カンゴッ)」と称しています。祓川は霧島東神社(旧称霧島東御在所両所権現社)の、狭野は狭野神社(旧称狭野大権現社)のそれぞれ社家により伝承されています。どちらの神楽も400年ほど前から行われていると推定されています。現在、狭野は毎年12月第1土曜、祓川は毎年12月第2土曜の、それぞれ午後7時頃から翌朝まで夜を徹して行われます。
 かつて宮崎県南・西部を含む旧薩摩藩には数多くの神舞がありましたが、その殆どが衰退あるいは消滅しています。霧島連山近辺にも多くの神舞がありましたが、殆どが古文書で認知できるのみ、あるいは擬似復興・番付減少などの状態で運営されており、従来どおり夜を徹して行われるのは、高原町にある2つの神楽のみとなりました。  
 「高原の神舞」の特徴としては、屋外に大規模な舞庭を設える事、真剣や長刀など武具を多用した舞の多さが挙げられます。特に12人が真剣を持って舞う「十二人剱(じゅうににんつるぎ)」(祓川)や、子どもが真剣の切先を握って舞う「剱(つるぎ)」(祓川)・「踏剱(ふんつるぎ)」(狭野)は有名です。  
 高原町では、これらの民俗芸能に対して、記録保存のためのビデオ撮影を行う一方、平成10〜11年度には、文化庁及び県の補助を受け、国内の研究者を招聘しての学術調査も実施しました。これにより2つの神楽の重要性が指摘され、狭野神楽は平成15年に宮崎県の無形民俗文化財に指定されました(祓川は昭和49年に記録作成等の措置を講ずべき無形民俗文化財に選択)。これらの成果により認知度が高まり、平成19年6月に国立劇場で祓川神楽の公演が行われ、同年10月には福岡市で行われた九州地区民俗芸能大会に狭野神楽が出演しました。  
 現在、高原町でも少子高齢化及び過疎化が進んでいるため、地区内における後継者(特に子どもと若年層)の確保及び育成が最も大きな課題となっています。特に祓川の場合、霧島東神社の氏子のみで行うというしきたりがあるため、この問題はより深刻です。町としても保存会と連携を取りながら保存に向けての対策を模索しているところです。  

 祓川神楽「十二人剱」(1)  祓川神楽「十二人剱」(2)

 狭野神楽「踏剱」(1)  狭野神楽「踏剱」(2)       


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