東栄町の民俗芸能「花祭」
(愛知県東栄町)


 東栄町は愛知県の北東部、奥三河の山岳地帯にあって、東の境を静岡県と接する位置にあります。
 深山幽谷の地理的条件から古くからの民俗的特性を色濃く残し、この21世紀にあってなお、幾多の民俗学研究者や愛好家の注目を集め続けています。
 中でも民俗芸能「花祭」はその代表で、毎年11月から3月にかけて町内11か所で開催され、当日は内外からの観衆で一杯となり、笛・太鼓の調べにのせて懸命に舞い踊る様は、まさに神人和合の境地といえます。
 以前には大変に神聖視され、注連縄で区画された祭場は女人禁制とされていたほどですが、現在ではそれも解かれ、老若男女が入り交じる賑わいを見せています。
 花祭は遠く鎌倉時代に修験者が伝えたとされる神事芸能で、「生まれ清まれり」を願う擬死再生の精神が根本思想としてあるようです。現在も神事は大変おごそかに行われ、数百年の流れを今に感じることができます。
 「テーホヘ、テホヘ」の掛け声に乗せて登場する榊鬼は、我が町をそして今や日本を代表する民俗芸能「花祭」の象徴的存在で、登場の場面はどこの会場でも大いにわき上がります。
 この貴重な民俗芸能を町の文化・観光の柱にと、昭和62年を皮切りに「東栄フェスティバル」と題し、各地区の花祭のダイジェスト版としてイベント化しました。一昼夜にわたる花祭を町内11か所すべて見ることは大変ですが、このイベントの開催により手軽に民俗芸能に接することができると好評を博し、今は毎年11月3日の文化の日を定例開催日として、約5千人の観衆を集める町最大の観光イベントに成長しました。このイベントは各地区の花祭に先立って行われることから、シーズン到来を告げる広告としての効果を上げています。
 記録保存も映像や写真により年々積み上げてきていますが、その集大成として平成15年度には東栄町誌「伝統芸能編」を発刊しました。一つの芸能の詳細記述では、類例がないものと自負しています。
 知名度が上がり県や国を代表する民俗芸能として様々な催しへの出演など華やかな一面もありますが、全国山村の例に漏れず、過疎・高齢化の状況は深刻で、担い手不足は祭りの存続に暗い影を落としています。
 そんな状況に一筋の光明をと、平成18年度に都市住民との協働をめざす「市民活動団体等支援総合事業」の中に、「花祭の里交流事業」を盛り込み、人出不足に悩む地区民とともに都市住民が祭りの開催に一役を担うという新たな交流事業を行いました。まだ、1回目の開催で確たる成果は出ていませんが、参加する側も受け入れる側もメリットが得られたとの報告を受けており、今後の取り組みによっては危機的状況から脱する妙案となる可能性が十分あり、今後も持続的な活動に向けて面的・質的な展開を期しています。   

 花祭の主役「榊鬼」      東栄フェスティバルでの花祭実演   


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