浦安市の民俗芸能保存振興への取り組み
(千葉県浦安市)
浦安市は今でこそディズニーランド、あるいはリゾートホテル群などのイメージが強いのですが、もとは東京湾最奥部、江戸川(利根川)河口域のデルタ地帯に位置する、漁業を主な生業とするまちでした。海にむかって広大な干潟・浅海域が広がり、海苔・アサリ・ハマグリなどの主産地として、または東京へ魚貝類を運ぶ流通基地として発展してきました。しかし、このような豊饒の海を背後に持った浦安も、高度経済成長期の波にのまれ、昭和三十年代以降、急激に変貌していきました。とくに昭和四十年(一九六五)から始まった海面埋め立て事業により干潟は消滅し、市域は約4倍、人口は約8.5倍にも増えたのです。
このような移り変わりの激しい浦安市には様々な行政課題があります。新旧住民の交流もその大きな課題の一つです。かつての浦安の歴史・文化を学び、新しいまちづくりを進めていくには、文化財の保護活用事業はたいへん重要な役割を持っています。
幸いにも市域には中世以降の様々な文化財が点在しており、平成十三年にはこれら文化財保護活用の拠点となる浦安市郷土博物館が開館しました。千葉県および市指定文化財は市内に全部で二十八ありますが、このうち民俗芸能分野では、念仏踊りが起源ともいわれるお洒落踊り(千葉県指定無形民俗文化財)、葛西囃子の系統を伝える浦安囃子(浦安市指定無形民俗文化財)が伝わっています。それぞれに保存会が結成され、博物館を日常の活動の場として様々な事業を行っています。
最近の活動を紹介しますと、浦安お洒落保存会は、平成十六年度、千葉県指定を受けてから三十周年を迎えたことを記念して、展示会のほか、お洒落踊りと関係のある近隣の文化団体との交流公演会を実施しました。また浦安囃子保存会は、平成十七年度、浦安市指定三十周年を記念して、これまでの歩みや使用してきた楽器や衣装などの展示会、里神楽の上演、「伝統芸能を学ぶ」とした学校授業、太鼓叩きの体験会などを実施しました。このような活動を通して、後継者の育成、一度途切れた演目の復活、他地域の文化財団体との交流などが図られるようになっています。
浦安市としては、これら豊かな文化遺産を市民みんなの宝ものとして後世に伝えるべく、公演の場の設定、市民への周知、各種事業への協力・共同実施など、さらなる支援を考えています。また、博物館を拠点として、文化財保護活用を軸としたまちづくりを、積極的に推進し、市民一人ひとりが誇りを持てるような「浦安」のまちめざして、より一層努力していきたいと思っています。