遊佐町の民俗芸能に関する取り組み
(山形県遊佐町)


 遊佐町は山形県の沿岸最北部に位置し、秀峰鳥海山(標高2,236m)を挟み、秋田県南部と県境を接する町です。
 北部に位置する鳥海山は、町の象徴的存在として聳え立ち、その豊富な湧水で麓に豊饒の恵みをもたらし、当町は山形県内でも有数の米どころとして知られております。また、西は日本海に接し、天然岩ガキの一大産地としても知られる、まさに大地と海の恵み豊かな町といえます。
 鳥海山は古くから出羽三山とともに修験の山として広く知られ、人々の崇敬を集め、町内では鳥海山の信仰に由来する番楽や延年などの伝統芸能が発展してきました。  なかでも、杉沢地区に伝わる「杉沢比山」は、鳥海山の山伏が伝えた町を代表する民俗芸能の一つで、その起源を鎌倉時代にまで遡ると言われており、昭和53年に国重要無形民俗文化財の指定を受けています。
 杉沢比山の現地公演は毎年8月6日、15日、20日の三晩、地元の杉沢熊野神社境内の特設舞台で行なわれ、毎年、町内外から多くの観客や研究者が訪れ注目を集めています。
 後継者育成における特筆すべき事例として、「杉沢比山」では地元の小学校と連携し、昭和40年より舞の基本動作「比山体操」を学校の授業に取り入れ、伝承集落を越え、より広域的に保存伝承を図る取り組みを行なっています。
 一方、日本海沿岸部の女鹿、滝ノ浦、鳥崎の3集落においては、秋田県男鹿のナマハゲに代表される、日本海沿岸に分布する正月の来訪神行事の一種「アマハゲ」が伝承されており、一連の小正月行事を含め、「遊佐の小正月行事」として平成11年に国重要無形民俗文化財の指定を受けています。
 このうち、鳥崎集落においては、平成17年度より町内外から親子を招き、アマハゲにおびえる子どもを親が抱きしめることにより、親子の絆を深めてもらうとともに、アマハゲ行事を広く紹介し次世代への伝承を図る取り組みを行なっています。
 このように、当町では山と海に囲まれた歴史地理的背景を受け、多様な民俗芸能が発展し連綿として現在まで受け継がれ、国・県・町の無形民俗文化財指定物件は8件にのぼっています。
 町では、これら民俗芸能の保存・伝承をより強めるため、昭和35年より民俗芸能公演会を開催し、今年度で第49回を迎えることになりました。
 本公演会においては、町内に伝わる民俗芸能を一堂に会して披露することにより、町民から地域に根ざして受け継がれてきた芸能のすばらしさを再認識してもらい、あわせて保存団体の継承活動の一層の活性化を図っています。
 今後、多くの農村集落がそうであるように、当町でも、高齢化の進行により、各民俗芸能保存団体の後継者問題がより深刻になることが予想されますが、これまで実践されてきた各団体の取り組みをヒントに、より広域的な後継者育成を視野に入れながら、町全体で次世代への文化の伝承を目指して行きます。  

 杉山比山 演目 大江山    アマハゲ


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